緊急告知日記

気が付いてみれば、気が付いてみなくても、
今年も残すところあと僅か・・・。
あっという間の一年でした。

おとといは「のだめカンタービレ」というワン・クールの
ドラマの最後の出番の撮りがあり、真夜中のスタジオで、
早く帰って寝たいもんだと目をしょぼしょぼさせながら
花束と拍手を頂き、あくびを堪えながら、高速道路を
ブッ飛ばして帰宅。

何故眠たかったというと、その日は
来年早々始まる「わるいやつら」という松本清張原作の
ワン・クールのドラマの、私にとって初日のスタジオ収録が
あり、しかも朝一番手からの撮りで、インの日というのは
どんな作品でも気合が入り、終わるとドッと疲れるわけです。

しかし考えてみれば、考えて見なくても、
一日のうちに、一本の作品が終わり、一本の作品が始まる。
というハリウッドスターなら腰を抜かすかケツを捲くるような
スケジュールで、ありがたいような、図々しいような
来年も年明けから仕事があるぞとホッとしたような、
複雑な一日なのでございました。

さて、ここからが自己ピーアールです。

今年の最後を締めくくるに相応しいドラマが(自分にとって)
12月27日に、NHK総合でPM11時、放送されます。
ドラマと言っていいものかどうか・・・。


タイトルは「伊武さん、ルート外れてます」

伊武雅刀が、伊武雅刀を演じる。


どうです。面白そうでしょう?

どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクション
なのか。

ねっ、興味あるでしょう?

演出が・・・外人なんです。
さあ、いままで見たことが無いようなものかもしれねぇぞ。
これまでお目にかかったことのないものなのかしら。

ヤツとは(外人のこと)現場で相当やりあいました。
この日本じゃ、そんなもんが通用すると思ってんのか、と。
激しく衝突しました。

さらに、普通のドラマのように
「あ、こいつが出てる」とか
「わあ、あの人がでてるう」なんて言うもんじゃなく、
ほとんどテレビで初めて見る人々のオン・パレードです。

ここがチョつと弱いという不安はあります。
しかし、それだけに妙にリアルです。

それこそ狙いなわけです。

是非見てください。
感想を聞かせて下さい。


 ◆   ◆   ◆  


最近読んで感動した本
「風が強く吹いている」 三浦しをん


最近読んで、恐ろしくて食事がのどを通らなかった本
「食品の裏側」 安部 司


最近読んで、面白いけど疲れた本
「風林火山の台本」 脚本 大森 寿美男
来年の大河ドラマ。

俺も出演するんで当然読むんだけど
セリフが時代物だから、覚えんのめんどくせぇー。
客観的に読んでるぶんには、よく出来たいいシナリオです。
久し振りに骨のある大河ドラマ、と思います。
Date: 2006/12/21(木)


今宵は 熱海

ひとり ぶらりと 旅に出るのもいいけれど
男同士の二人旅ってぇのも 楽しいもんだ。

東海道を西へと下った やじさんときたさんの 珍道中。
スケアクロウ なんていう映画もあった。

というわけで
俺は、切り絵画家のSと旅に出た。

S 「どこに行きますか」
俺 「仕事が終わるの夕方だから、近場がいいな」
S 「熱海は・・・」
俺 「あっ、いいね。めしは俺が手配するから、
   宿のほうを抑えといてよ」

というわけで
品川から、新幹線で熱海へ。

駅前からタクシーでワンメーターの宿へ。
今宵の宿は、お宮の松の前にあるホテル。
朝飯が付いて、1泊7000円でおつりがくる。

眼の前は海だし、露天風呂もある。が、着いたのが7時30分。
部屋に荷物を放り込んで、お目当ての飲み屋に向かう。

「A」の暖簾をくぐると、親父の元気な声がかかる。
「おっ、いらっしゃい。今日は魚、いっぱいあるよ、
 連絡もらってたからね」

さて、なに飲むか。まずは、ビールで乾杯だな。
冷えたビールとツマミが出る。
鯖とソーダ鰹の切り身をから揚げして、甘酢餡をかけたもの。

くううーとビールをのどに流しこんで、カウンターの横の
水槽に目をやる。
いるいる。魚たちが威勢良く泳ぎ回っている。
大振りのめじな。いさき。かわはぎ。さば。あじ。

魚も泳いでるが、俺の目も泳いでいる。

Sが興奮しながら、携帯カメラで写真を撮っている。
俺 「これ見ちゃうと、やはり酒だな」
S 「熱燗にしようかな」
親父「ひれ酒、飲むかい」
S 「いいですねー」
親父「ひれは、鬼かさごのヒレだよ。東京じゃ、
   まず出してくんないと思うよ」
俺 「えっ、鬼かさごのヒレは初めてだなぁ」
S 「ぼくも。美味しいんですか」

その時、カウンターで独りで飲んでいた先客が横から
口をはさむ。

客 「永田町あたりのお偉いさん達のあいだで、密かなブーム
になってるらしいよ。これから型のいいのが獲れるから。
   なぁ、あーちゃん」
親父「まあ、飲んでみてよ。これが、その鬼かさごのヒレ」

眼の前に出された三枚のヒレは、ふぐの二倍はあろうかという
立派なもの。

俺 「ふーん、きれいだな。写真機持ってくればよかった」
客 「伊武さん。写真機は古いよ。あ、これは失礼」
親父「この人あ、居合いの先生」
客 「いやあ、やっとうやってるただの酒飲み」
S 「やっとう?」
俺 「刀・・・いや、持ってきたんだけど、ホテルに置いて
   来ちゃった」
S 「ぼくも・・・タクシーで取ってこようかな」
俺 「いいよ、わざわざ。で、魚は何食べたらいい」
親父「今、しめさば出すから。・・・・これで、そこから、
   好きなのすくってよ」
と、タモが手渡される。

食べたい魚を、自分で掬うのも滅多にない経験だ。
興奮する。

俺 「おー、どーする?めじなかなぁ。でかいな、これは、
   二人だとこれだけで腹ふくれちゃうな。ねぇ、どーする?   よし、かわはぎにしよう」
親父「かわはぎだったら、肝あえ造ってやるよ」
俺 「よし。二匹いるけど、こっちの小さい方のやつを・・・」
親父「ゆっくり入れないと・・・そおっと、1回魚逃げたらあと   で捕まえるのが大変だ。そうそう、そーつと。うまい
   うまい、その調子だ」
タモの中に入ったかわはぎを、親父に手渡す。

ヒレの入った燗酒が、透明な器で出てきた。
親父「5分待ってから飲んで・・」

しめさばが出る。
美しい身だ。白っぽさのない、殆ど〆てない、新鮮なのが
一目で判る。

親父「イブさん、しめさばは大丈夫」
俺 「大好き、大好き。二回救急車呼んだことあるけど」
親父「あっ、じゃあ血合い取ればよかったな。そーすれば、     まず当たんないから」
S 「平気、平気。いや、旨い。信じられない旨さです」

人事だと思って、俺はホントに自分で〆た鯖にあたって、
夜中に病院に運ばれ、夜間勤務の若い医師に、あくびしながら
注射打たれたんだぞ。と思いつつ、一切れ口に入れ、噛みしめる。うーむ、絶妙なあぶらの乗り具合だ。

S 「親父さん、もうひれ酒飲んでいい」

猪口に酒を注いで、ふたたび乾杯。

俺 「うっ、・・・これはふぐのヒレなんか問題にならない
   なあ」
S 「ほんと、いやーすごい」

二人して興奮する。
上品でまろやかな味わいに絶句する。

かわはぎの肝あえが出る。
文字どうり、細く切った身に、たたいた肝があえてある。
肝醤油では食べたことがあるが、この食べさせ方ははじめてだ。

親父「どお、このほうが甘みがでるんだよ」
S 「ほんと、いやー旨い。まいったなあ。カメラ取りに  
   行こうかな」

水槽の魚は、すべて、漁師もやっている親父さんが、
今朝獲って来て放した。鮮度は申し分のないものだ。
Sが、めじなも食べたいと言い出し、二人では多いので、
居合い切りの先生に助けてもらい、

さらにSが、タモでさばを掬って、刺身にしてもらい、

さらにひれ酒を追加して、

さらに、かさごのような煮魚が出て、

さらにひれ酒を追加して、

さらに自家製のかわはぎの干物も焼いてもらい・・・・


夜は更けて、三人の客とカウンターのなかの親父さん。
四方山話に花が咲き、ほのぼのとした時が流れる。

俺 「ご馳走様、勘定して下さい」
S 「いやあ美味しかったです。また来ます。覚えといてね」
客 「明日は、どちらに回るんですか」
俺 「何にも考えてません。じゃ、お元気で」
親父「今度は花火の時に来てよ。船出して、海から花火見るのも   いいよ。ええと、いつもどおり、一人5000円」
S 「えっ、えー」
俺 「いいから、いいから。行くぞ」

外に出ると、昼過ぎから降っていた雨も上がり
千鳥足でホテルへ向かう熱海の渚町の路地。
Sが怪しいろれつで叫んだ。

S 「いやー、あの店はいい。いい店教えてもらったです。
   熱海まで来たかいがあった」
俺 「さて、明日はどうするか」
S 「明日になって考えよう」
俺 「うん、そうだよな。とりあえず、今日は大正解だった」

 
さて、明日は何が待ち受けているのか。  続く。
Date: 2006/12/13(水)


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